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なんとかならないもんかね

就規、労働協約、労使協定

就業規則と労働協約および労使協定の違いについて、確認します。

就業規則は、労働基準法によって、「常時10人以上の労働者を使用する使用者」に対して作成義務が課せられたものであり、使用者が経営権の一環として一方的に作成・変更することができるもの(ただし、意見聴取義務あり)です。これに対し、労働協約は、労働組合法の定めに基づくものであり、使用者と労働組合との合意があれば、法令に違反しない限り、記載事項や名称に制限はありません。また、労使協定は、労働基準法でその締結の要件や内容が特定されており、労使協定を締結すれば、労働基準法の定めに違反しないという免罰的効果を持つものです。

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(1)就業規則と労働協約
就業規則は、労働基準法で「常時10人以上の労働者を使用する使用者」に対して作成義務が課されたもの(第89条第1項)で、経営権の一環として使用者が一方的に作成することができるものです。その作成・変更のためには、労働者への周知、意見聴取、行政官庁への届出という3つの手続きが必要とされています。この手続きを経て作成された就業規則は、当該事業場のすべての労働者に適用されます。また、労働基準法は、就業規則に記載すべき事項(絶対的必要記載事項と相対的必要記載事項がある)についても定めています。
これに対して、労働協約は「使用者と労働組合との間の書面による協定」(労働組合法第14条)のことで、労働協約の締結能力をもつ労使両当事者が署名し、または記名押印することによってその効力が生じます。したがって、この要件と形式を備えていれば、記載事項や名称は両当事者に委ねられており、「協定」とか「覚書」、「確認書」等の名称であっても法律上はすべて労働協約と認められます。ただし、当然のことながら労働組合のない事業場では労働協約を締結することはできませんし、労働協約は、原則として、当該労働組合の組合員にのみ適用されます。また、労働協約は、行政官庁に届出をする必要はありません。
就業規則と労働協約はともに労働条件を集団的に規制するものであるという点では同一の機能をもちますが、両者の関係について、労働基準法では「就業規則は、法令又は当該事業場において適用される労働協約に反してはならない」(第92条第1項)と定められており、労働協約が就業規則より優位に立つものとされています。したがって、就業規則の定めのうち、労働協約に反する条項がある場合には、その条項は無効となり、労働協約に定めた条項が効力を持ちます。これは、就業規則は使用者が一方的に制定・変更することができるものであるのに対して、労働協約は、労使両当事者の合意によってはじめて締結されるものだからです。
 ところで、労働協約を締結した場合にも就業規則の作成が必要かどうかについては、結論から申し上げますと「必要」となります。なぜなら、就業規則はすべての従業員(いわゆる中間管理職を含む)に適用されるのに対し、労働協約の効力は、あくまで当該労働組合の組合員(監督的地位にある者は組合員となれないので除かれる)にしか及ばないからです。したがって、労働協約が締結されている場合にも、就業規則を作成しなければならないわけです。

(2)労使協定と就業規則
次に、労使協定ですが、これは使用者と事業場の過半数の労働者で組織された労働組合または過半数を代表する者との間で締結した文書のことです。労使協定には、いわゆる三六協定(時間外・休日労働に関する協定)や二四協定(賃金控除協定)、各種の変形労働時間制に関する協定、年次有給休暇の計画的付与に関する協定など、17種類の労使協定がありますが、これらはすべて、労働基準法に定められたものです。また、労使協定には、行政官庁への届出が必要なものと必要ないものがあります。
労使協定と就業規則の違いは、労使協定を締結した場合には、強行法規である労働基準法の原則的な定めによらないでも法違反にならないという免罰的効果を持つのに対し、就業規則はその定めるところによって労働者に債務を課す(たとえば、時間外労働を命ずることができるという)民事的な効果を持ちます。したがって、たとえば、時間外労働等をさせようとする場合、三六協定だけでは足りず、就業規則の定めが必要となります。このように、労使協定を締結すれば、就業規則が必要なくなるどころか、就業規則の定めに基づいて労使協定を締結するわけです。

(3)労使協定と労働協約
最後に、労使協定と労働協約の違いです。
①まず、労使協定が労働基準法を法源とするのに対し、労働協約は労働組合法を法源とするという点で異なります。
②また、労使協定は、労働組合がない場合にも「事業場の労働者の労働者の過半数を代表する者」との間でも締結することができますが、労働協約は労働組合がない場合には締結できません。
③さらに、労働組合がある場合にも、労使協定は「労働者の過半数で組織する労働組合」との間でしか締結できないのに対して、労働協約は少数組合との間でも締結することができます。
④このほか、労使協定は、前述のように、労働基準法でその種類や定めるべき事項が定められているのに対し、労働協約は労使両当事者間の合意があれば、内容については任意(ただし、法令に抵触する内容を締結しても無効)であるという点でも違いがあります。

以上
by tomzoy | 2010-06-12 11:41 | 覚え書き
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